魔術師のローブが捲れ上がって、形のいい脚がむき出しになった。脚のお肌もつやつやで、八十になるだなんて思えない。

「迎えに来た……エリーシャ」

 扉ごとユージェニーを吹き飛ばした男は、完璧にユージェニーを無視して、部屋に入ってくるなりエリーシャの方へと手を差し伸べた。

 エリーシャと同じ色合いの金色の髪に青い瞳。身につけている衣服は、ダーレーン国内の流行のものだった。

「いたたたたっ……いきなり扉を吹飛ばすなんて……魔術師としての能力を完全に開花させたのね、クリスティアン・ルイズ」

 したたかに打ちつけた腰をさすりながら、ユージェニーが身を起こす。

「お前に言うことはない――この場から立ち去れ」

「……そういうわけにもいかないのよ。だって、エリーシャ皇女殿下と契約しているんですもの」

 今まで余裕を保っていたユージェニーが表情を変えた。

「……わたしを、どこに連れて行くつもり?」

 アイラの予想に反して、クリスティアンに語りかけるエリーシャの声は冷静なものだった。