いつものペースを取り戻したエリーシャは容赦ない。アイラは苦笑いする。ベリンダの方に顔を向けると、彼女も同じような顔をしていた。

「……まずいな」

 ふいにベリンダが言う。ユージェニーもベリンダと同意見のようだった。

「カーラがやられたわね。わたしが行った方が早そう……この皇宮の魔術師、ほぼ全員シモンの弟子なんだもの。だから違う血も入れなさいってジェンセンに忠告したのに。わたしの仕掛け、わかってるわね?」

「わかってるけど、わたしじゃ発動させられるかどうか」

「やりなさい。皇女様以下この部屋にいる全員の命がかかっているんだから」

 ベリンダとの魔術師同士の会話を終え、ユージェニーは魔術師のローブを勢いよく翻した。

「申し訳ありませんが、わたくし、退室させていただきますわ、皇女殿下。どうやら皇宮付きの魔術師たちが次々にやられているようですの。ちょっと行って参りますわね。後のことはベリンダにまかせておきますから、ご安心を」

 図書室から出て行こうと彼女が扉に手をかけた時、扉が勢いよく吹き飛ばされた。
「いやああああんっ!」

 妙に可愛らしい悲鳴を上げて、ユージェニーが床に転がる。