「セシリーとその協力者、ですわ。一人だけ皇宮内への侵入を許してしまいましたの。今ジェンセンとカーラが対応に当たっているはずです」

「あんたは?」

 まだ疑っている口ぶりでベリンダはたずねた。ユージェニーはひょいと肩をすくめた。

「皇宮の守りまでは契約に入ってないもの。ただ、契約してくださったエリーシャ様の身に何かあったら女帝の槍を借りられないでしょう? だからここで皇女様の護衛をするつもり。特別サービスよ。そろそろ若返りの術を施さないと、おばさんになっちゃうもの」

 ぱちりとアイラに向かってユージェニーは片目を閉じてみせる。そうしているだけですさまじい色気が発揮されて、面食らったアイラは目をぱちぱちとさせた。

「それにしても、ジェンセンも面白い魔方陣を組んだわねぇ」

 ユージェニーは、アイラが父に命じられて書いた魔方陣に目をやった。それから魔方陣に向けて、指を向ける。

「ユージェニー・コルスの名において命じる。影の精霊、アイリーンよ、その姿を消せ」
 ユージェニーの指先から、黒い光が走り出たかと思うと、アイラの描いた魔方陣が姿を消してしまう。