「あら、彼女は護衛侍女よ? あなたたち下手なことを言わない方がいいんじゃないの?」
「後ろからばっさりやられちゃったりして」

 イリアが攻勢に出ると、すかさずファナが援護する。

「でも、犯人はわからないわよねー」
「全力でもみ消すものねー」

 いやいや、全力でもみ消すのはまずいだろう――だが、エリーシャの権力を持てばそのくらい可能なのかもしれない。

 買われた身だから、しかたないのだけれど――とんでもないところに来てしまったものだとアイラは青ざめる。

 昨日までカフェで働いていた一般人には理解しがたい世界だ。皇帝の愛人たちがこちらを見てひそひそ言い合っているのも気分のいいものではない。

 早くも家に帰りたくてしかたないアイラだったが、その願いは思いがけない形でかなえられることになる。