「クリスティアン様は、二年前に死亡。その身体をセシリーの関係者が乗っ取っている」
「ちょっと!」

 アイラはジェンセンに詰め寄る。

「言っていいことと悪いことがあるでしょ!」
「アイラ!」

 鋭いエリーシャの声が、室内の空気を切り裂く。ぎょっとしてアイラが振り返ると、エリーシャは手を振ってアイラに座るように命じた。

「では、その推測が正しかったとするなら、二年前にわたしが見た死体は本物のクリスティアンってことね?」

 エリーシャは顔を歪ませた。

「二番目の推測だけは認めたくないわね。だって、……婚約者を見分けられなかったなんて……そんなこと信じたくないもの」

 クリスティアンの名前がからむと、エリーシャの表情はいつものものと違う。そのことにアイラは気づいたけれど、追求しようとは思わなかった。

「……クリスティアン・ルイズ」

 そっと死んだ婚約者の名を口にあげて、エリーシャは両手を胸の前で組み合わせた。皆はしんとして、エリーシャを見守っている。