「……と、いうことは新女王は傀儡で黒幕がいるということかしら。手っ取り早いのは夫?」

 いつの間に飲み干したのか、エリーシャは空になったカップを振ってお茶のおかわりを要求しながら言った。

「鋭いですな、エリーシャ様。そして、女王の夫は――ダーレーン人ではない。どうやって婿に入り込んだのかまではまだ調べがついていませんが」

「……わたしも知っている人間なのかしら」

 アイラがおかわりを注いだお茶のカップを、優雅な手つきで口に運ぶ。少しばかり顔が似ていても、身についた気品というものまでは似ないのだなとアイラはエリーシャの横顔を見つめる。

 ジェンセンは正面を向いた。

「クリスティアン・ルイズ」

 エリーシャがカップを放り出して立ち上がった。

「冗談でも言っていいことと悪いことがあるわよ! ジェンセン・ヨーク!」

 状況が飲み込めていないアイラは、おろおろと主と父に交互に視線を走らせることしかできなかった。

 クリスティアンと言えば、エリーシャの婚約者で二年前に惨殺されたということしかアイラは知らない。

「クリスティアンは死――」
「遺体の確認はなさいましたか? ご自身の目で」

 立ち上がったまま拳を握りしめていたエリーシャがすとんと腰を落とす。