しばらくの間おとなしくしているということで皆の意見が一致したはずなのに、エリーシャが騒ぎ出すまで一か月しかなかった。

「退屈! 退屈! 飲みに行きたい!」
「……それはちょっと」
「わかってるわよっ!」

 侍女たちに冷たい視線で見られ、エリーシャはむくれた顔でソファにひっくり返った。クッションを腹の上に抱えて、足をじたばたさせる。

「アイラ、厨房から何かもらってきてよ」
「お菓子ですか? おつまみですか?」
「決まってるでしょ!」
「アイラ行っておいで」

 ベリンダに言われ、アイラは立ち上がった。

「わたしはワイン倉に行ってくるよ。エリーシャ様、ワインでよろしいのでしょう?」

 他の二人は休暇をとっている――といっても、二人とも後宮を出るのはいやがったので、前宮の国民に開放されている区画にお茶をしに行っているだけだ――ために、この場に残っているのは、アイラとベリンダの二人だった。

 厨房から魚のパイやチーズや蒸した野菜をアイラが運んでくると、ベリンダはワイン倉から大量にワインを出してきた。