「それにしても――ユージェニーは誰に雇われていたのかしら。おばあ様?」
「いや、それはないでしょう」

 ダーシーが静かに言う。

「皇后陛下は情報を流しただけ――自らユージェニーのような魔術師を雇ったりはなさらないでしょう。後のことを考えればね」

「後のこと?」

「エリーシャ様が亡くなった後、犯人を探すでしょう――別荘の時のように襲われたのならなおさらです。間に何人もの人間が関わっているはずです」

「おばあ様への協力者がそんなにたくさんいるだなんてぞくぞくしちゃうわね」

 できるだけ冗談めかした口調でエリーシャは言ったけれど、その表情は硬いものだ。

「ですから命をかけてお守りしますと申し上げておりますのに」
「あなたなんてアテにしてないわ」

 ダーシーがエリーシャの手を取ろうとしたけれど、エリーシャはその手を背中に隠した。