「でも、毒の情報なんてよく引き出せたわね?」

 皇后の侍女ともなれば、皇后の体調を漏らすことがどれほど危険なことかよく理解しているはずだ。一応後宮内のこととはいえ、皇后とエリーシャの仲が微妙なことくらい知っているはずだ。

 エリーシャ側の侍女ということになっているベリンダに易々と情報を漏らすなんて何かおかしい。

「酒が入って警戒心がゆるんだところで、ちょっと心を操らせてもらいました。口が軽くなるように暗示をかけてやっただけですがね――」

「あらあら」

 エリーシャが少し気の毒そうに言った。その手の暗示をかけられれば、翌日はひどい頭痛に襲われることになるだろう。二日酔いだと思ってくれればいいのだが。

 エリーシャはうんうんとうなりながらアイラを手招きした。

「お茶ちょうだい。あとお菓子」
「かしこまりました」

 エリーシャの前に大量にお菓子を積み上げる。焼きたてのパイを一つ取って、エリーシャは手づかみでかじりついた。

 ダーシーも気にしていない様子で、同じように手づかみでパイを取り上げる。