申し訳なさそうに身を縮めたパリィはひとまずおいておいて、エリーシャはジェンセンの方に向き直る。

「で? セシリーはどうなの?」
「ありゃ、恐ろしい女ですよ」

 口調はひょうひょうとしていたものの、ジェンセンは珍しく恐れているような気配だった。

「今回引き分けられたのも運がいいくらいだ」

 形のいい顎にエリーシャは、手を当てて考え込んだ。天才と呼ばれるジェンセンと引き分けられるほどの腕となればセシリーもまた天才ということになる。

「運がいいくらいってことは、あなたより上?」
「――その可能性も否定できませんな。もう一度やれ、と言われてもお断りしたいくらいだ」

 ジェンセンの言葉にその場の空気が凍りついた。小汚い外見であっても、日頃の態度がいい加減であっても、ジェンセンがタラゴナ帝国一といっていい腕の持ち主であることはこの場に居合わせる誰もが知っている。
 
「では、複数人ならば?」
「複数?」

「魔術師は、人数を集めればより強力な魔術を行使することができるのでしょう?」
「――ジェンセン・ヨーク以上の腕の持ち主とやり合うバカを集めることができれば、あるいは」