イヴェリンは首を横に振った。何とも手際のいいことに、彼女は四人分の荷物をまとめて担いでいる。

「あ、宿代!」

 アイラは悲鳴を上げたが、イヴェリンは冷静だった。

「夜のうちに発つと書いた紙と金貨をおいてきた。十日分に相当する額だから、あの宿は今夜大繁盛だな」

 むろんこれも口止め料込み、ということになる。

「まあいいわ。報告は居間で聞くから。終わったらフェランとライナスはこっそり皇女宮から出てちょうだい。一応、ここは男子禁制ですからね!」
「裏口から出たらいいですよ」
「あそこは裏口じゃない」

 アイラの言葉に、ライナスは眉を寄せた。アイラが言っているのは、エリーシャの夜遊び専用通路と化している隠し通路のことだ。

「それじゃ、皆さんは居間へどうぞ。エリーシャ様、お着替えを――」

「他の人たちも起こしてちょうだい。手が必要になるかもしれないし、あ、イヴェリン。ゴンゾルフも呼んできて」

「かしこまりました」