「何だ! 化け物――!」
「逃げろ!」

 屋敷の中にいた人間たちは、リエンナの姿を見るとちりぢりに散っていくのだろう。上階からは、慌ただしい音が響いてくる。

「あ、一人くらい捕まえておいた方がよかったかね?」
「セシリーが屋敷のどこかにいるはずなんだが」

 振り返ったジェンセンに向かって、パリィが言う。

「――セシリーって確か、美人さんだよなー。それなら、俺が探してこよう。魔術師以外が太刀打ちできる相手とも思えないし。じゃ、後で会おうな」

 破壊された扉から顔を突き出し、何事もないことを確認して真っ先にジェンセンが階段を上った。

 ついてくるように、室内にいる者たちに合図する。

「アイラ。宿泊している場所に着いたら連絡くれ」
「わかった」

「動く死体は、リエンナが全部焼いた。つまり、ここに残っているのは生きている人間ばかりだ。自分たちでどうにかしてくれ」

「了解した」