二人が入り込んだのは滞在している町の中で一番立派な屋敷だった。人の気配があちこちにある。どこで学んだのかライナスは至って冷静で、人の気配に行きあうたびに物陰にアイラを引っ張り込んでやり過ごした。

「集会しているような気配でもあればいいんだがな」
「……やっぱり、地下です?」
「地下、だな」

 地下への階段をライナスは探す。地下へ降りる階段は、台所の脇にあった。そこを降りていくと階段の先には扉が一つだけある。

「この扉、何か気持ち悪いな」
「そうですか?」

 ライナスは、扉に手をかける。鍵がかかっているのに気がついて、ポケットからナイフを取り出した。

「いつでも泥棒に転職できますねぇ」
「黙れ」

 ひそひそささやくアイラを無視して、ライナスは要領よく鍵をこじ開ける。

「やばい、俺、この部屋だめだ……」

 ライナスは部屋に入ることなくそこでうずくまってしまった。

「……じゃ、ちょっと行ってきます」