イヴェリンはハンカチを取り出すと、うつむいて鼻をすすった。アイラは、自分の演技力を皆無だと知っていたからその芝居には乗らないで傍観者の立場を貫いている。

「夫が亡くなって……、あまりにも急なことでしたから……」

 殺されたゴンゾルフには気の毒だが、本人がこれを知ることはないのでまあいいだろう。

「それは大変だったなぁ」

 ケヴィンは気の毒そうな顔でそう言った。

「セシリー様の噂は帝国内でもよく聞くんです」
「それだけのお力を持っているってことだもんな」
「妹がこちらに嫁いでいて、彼女のところをたずねるついでに、セシリー様にお会いできたら……なんて……」

 下を向いて顔を隠したままのイヴェリンの言葉は、最後は涙に紛れて聞こえなくなってしまう。

「帝国内では信者の人を見る機会はなかったんですよ。こっちに来たら、首に黄色い布巻いている人がそうだって聞いたから」

 イヴェリンはやりすぎではないだろうか。仕方なくアイラは途中から、イヴェリンの説明を引き取った。