「い――命だけはお助けを! 積み荷は全て差し上げますから!」

 地面に這い蹲るようにして懇願しているのは、初老の男だった。

「うるさい。お前らのせいで、こっちは商売あがったりだ! 積み荷だけですむと思うなよ!」

 威勢のいい言葉を吐き出していた男がいきなり吹っ飛ばされた。思いきりイヴェリンが蹴り飛ばしたのだ。

 それと同時に彼女の手は、男が脅しのために抜いていた剣を取り上げていた。

「ふん、粗悪な剣だな!」

 イヴェリンは、自分が演じている役を完全に忘れ去っているようだった。粗悪と自分で評した剣を肩に担いで、吹っ飛んだ男の背中を思いきり踏みつけている。

 何だか似たような光景をつい最近見たような気がしたが、アイラはその点を追求するのはやめておいた。

「目立ってますよー、フェラン様のこと、言えませんよー」

 ぼそっとアイラは言ったけれど、当然彼女の耳には届いていないだろう。

「あ……相手は女一人だ、やっちまえ!」

 男には二人の仲間がいたようだ。イヴェリン一人と見てとって、二人とも剣を抜いてイヴェリンにつめよる。

「残念、妹ちゃんつきなんだよね!」

 アイラは飛び出した。近い方の男の足に、自分の足をひっかけ、さらに短剣で剣を持っている方の腕を傷つける。