翌朝、アイラとイヴェリンはまだ暗いうちに宿を立った。フェランとライナスはあちこちの店を冷やかしているついでに、いろいろな噂話を聞き集めてきたようだ。

 昨夜のうちに、頭の中に全てそれをしまい込んだアイラとイヴェリンは、歩きながら情報を精査する。

「でも、信者たちが集まっているという場所に行っても『教団に入れてください!』で入れてもらえるはずもないでしょうし」
「それも、そうだなんだろうな」

 信者たちは皆黄色い布を首に巻いているが、それは教団からの支給品だ。そのあたりの店で買った黄色い布を巻いたところで集会場所には入れてもらえないだろう。

「死者の声を聞かせてくれるという噂話を聞いて、タラゴナから来たとでも言ってみるか」
「……誰殺します?」
「夫だな」

 結構本気な声音でさらりと言ってのけたイヴェリンの顔を、アイラはまじまじと見つめた。眼鏡を外したイヴェリンの目が、愉快そうにきらめく。

「護衛だかお目付役だか知らないが、あいつらを寄越すんだ。殺したってかまわないだろう。どうせ話の上だけのことだ」