「馬鹿か。明日も早く出なきゃならないんだぞ」

 ライナスはフェランを諫めるが、フェランは聞く耳を持たなかった。

「お姉さん、美人だねー。俺と一杯どう?」

 ジョッキ三杯のビールを空けた後、赤い顔をしたフェランはイヴェリンとアイラのいるテーブルへと割り込んできた。

「俺おごるしー」

 イヴェリンの眉毛が危険な角度に寄るのをアイラは見た。イヴェリンの方へジョッキを滑らせたフェランが、それと同時に何かを渡す。

「……若様、飲み過ぎですよ?」

 イヴェリンがひきつった顔のまま、フェランをたしなめた。

「すまないな、従兄弟が迷惑かけて。こいつ少し飲み過ぎなんだ」

 自分たちのテーブルから立ってきたライナスがフェランの襟首をつかんで引きずっていく。

「妹ちゃんの方でもいいよぉ~」

 未練がましいフェランの声が酒場中に響きわたった。