皇女の宮に入ると、あたりの空気は一気に女性らしい華やいだものに変化した。廊下の窓にかけられているカーテンは、淡いピンク色のものだ。床のカーペットは取り払われて、磨き込まれた木目が輝いている。

 壁には花が生けられた花瓶がかけられて、甘い香りを放っていた。

「――ここが侍女の控え室だ。エリーシャ様は、政治学の授業で、今は教室にいらっしゃるはずだ」

 イヴェリンが扉を叩くと、中から大きく開かれる。

「イリア、新しい侍女を連れてきた。部屋を案内してやってくれ。後はまかせていいな?」

「はい、おまかせください、イヴェリン様」

 イリア、と呼ばれた少女はにこにことすると体をずらしてアイラを中に入れてくれた。

「……よろしく、お願いします……」

 アイラはぺこりと頭を下げ、部屋の中を見回す。そこにはもう一人いて、

「ファナよ、よろしく」

 とアイラに右手を差し出した。