「離さないん――だからねっ!」

 アイラは手にしたロープを懸命に両手で引く。

「出てこい。ロープは放して大丈夫だ」

 ロープにかかっていた重圧がなくなったかと思うと、イヴェリンの声がした。アイラはもぞもぞと藪から這いだす。

「……何やってるんですか、フェラン様」

 そこに転がり、背中をイヴェリンに踏みつけられている男の顔を確認して、アイラは目を丸くした。

「……乱暴じゃないかっ!」
「うあああああっ、靴、靴めり込んでるっ! アイラ、イヴェリン様をどけてくれ!」

 イヴェリンの靴が思いきりフェランの背中にめり込んでいる。

「お前についてこいといった覚えはないのだがな」

 嘆息したイヴェリンはようやくフェランの背中から足をおろしたのだった。