「何でしょう?」
「パリィの顔はわかるか? 今の状態でははなはだ不安なんだが」

 アイラは考え込んで、それから首を横に振る。

「変装してたら自信ないですねぇ。今だってイヴェリン様がわからなかったですし」
「心細い話だな。まあ仕方ない。出たとこ勝負でどうにかしよう」

 それからイヴェリンは、アイラが見たこともない表情でにこりと微笑んだ。

「頑張りましょうね、アイラ?」
「……最大の努力をさせていただきますぅ……」

 イヴェリンが柔らかな口調でしゃべると、ものすごく違和感がある。アイラは頬をひきつらせながらイヴェリンに同意したのだった。

 † † †

 その夜はその宿で過ごし、翌朝アイラとイヴェリンは、二人並んで歩き始めた。馬車を使ってもいいのだが、二人が現在身をやつしている古書店の主とその妹という身分では、乗り合い馬車も贅沢だ。一応路銀はエリーシャが十分に持たせてくれたのではあるが。

「エリーシャ様、ちゃんと禁酒できているんでしょうか」