「エリーシャ様ご自身の密偵もおられるのではないですか?」

「セシリー教団に侵入させたけれど、音沙汰ないのよ。密偵としては腕がいいから、見破られたはずはないと思うけれど」

「確かパリィ、と言いましたか」

 アイラは口をぽかんと開けて、父を見つめた。 父はどこまで知っているのだろう。

「おじい様に聞いたの?」

 エリーシャも表情を変えて、ジェンセンの顔をまじまじと見つめる。
「まさか」

 ジェンセンはにやりとすると、軽い口調で言ってのけた。

「エリーシャ様の夜遊びは何度も追いかけましたからね!」
「あらら、付いてこられていたのは気づかなかったわ!」
「エリーシャ様お一人でふらふらさせておくはずないでしょう」
「そうね、そうだったわね」
 
 ということは、酒場で大酒飲んでいたのも、街中で剣を振り回していたのもしっかりとジェンセンには見られていたわけで。

 それでいいのか、皇女殿下、とアイラは頭を抱えたくなった。とってもとっても今さらなのだが。