いずれにしても、ダーレーン国内で何があったのかを調べなければなるまい。皇宮内でも警備の厳重な後宮内にいるのならば、エリーシャにだっていくらでも手が打てる。

 ダーシーの身に危険が及ぶこともないだろう。エリーシャの祖母であり皇后であるオクタヴィアが、ダーレーン側につながりがあろうとも、エリーシャが全力で守りの体勢に入ったなら、後宮内でダーシーの暗殺を謀るような真似はできないはずだ。

「あなたの警護には、フェランとライナスを中心に皇女騎士団の騎士たちを。それからベリンダをつけるから」
「皇族待遇ですね、エリーシャ様」

 ダーシーは涼しい顔をしてお茶をすすっている。

「あなたが必要だからよ」
「愛してるとは言っていただけないのですか?」

 壁際に控えているアイラが喉から奇妙な声を出すのとは対照的に、エリーシャの方は表情を白けさせただけだった。

「言ってほしいなら言ってあげるけど? 愛してる、愛してる、愛して――」
「けっこうです」

 完全に棒読みの口調で言うエリーシャをダーシーは途中で遮った。