小首をかしげ、あいかわらずの笑みをうかべながら、エリーシャは目の前に膝をついたダーシーの方へ靴の脱げた左足を差し出した。

「君、靴をよこしたまえ」

 アイラにダーシーは手を差し出した。アイラは言われるままに靴を差し出す。

「ねえ、ダーシー。あなたはなぜわたしと結婚しようと思ったのかしら? まさかわたしを愛してるなんて寝言をほざくつもりはないのでしょう?」

 うわあああああ、とアイラは頭を抱え込みたくなった。日頃エリーシャのかぶっているいろいろなものが転げ落ちている。猫とか猫とか猫とか――一頭くらい虎も混ざっているかもしれない。

「起きている時に寝言を言う趣味はありませんよ、皇女様。ですが、あなたに夢中だと申し上げるのはおかしいことでしょうか? こうして、お側にいられるだけで夢のようだと申し上げたら?」

 嘘くさい! 心の中でアイラがつっこんでいる間に、ベリンダの表情はますます険しくなっている。

 エリーシャの眉が危険な角度に寄った。

「――失礼、いたします」

 恐る恐るダーシーはエリーシャのスカートをごくわずかに上側へとずらし――その下から出てきたものに戸惑ったように動きをとめた。