「お待ちしておりました、エリーシャ様」

 出迎えたダーシーは、アイラの目から見れば最初に出会った時のように生命力というものを感じさせない死んだ魚のような目つきで出迎えた。

「お招き、ありがとう。さて、今日のお茶はどこでいただけるのかしら?」

 エリーシャは、白い手袋をした手を、ダーシーの手に乗せた。表情を消したベリンダが、二人の後に従って、アイラは伏し目がちにベリンダの後につく。

「今日は天気がよいので、庭園に用意させました。父の自慢の水路を見てやってください。ダーレーンから取り寄せた噴水が見事なのですよ」
「あら、それは素敵」

 エリーシャは完璧な皇女スマイルで、ダーシーに微笑みかける。

「では、先に噴水を見てもかまわないかしら? 水路はどうなっているの?」
「屋敷の近くを流れている川の水を直接引き込んであるのです」

 エリーシャとダーシーは何気ない会話を続けながら、庭園内を流れる小川に沿って歩いて行った。

「まあ、噴水の縁の彫刻の見事なこと!」
「ダーレーンの彫刻家でなければこうはいかないでしょう」

 エリーシャが感嘆した声を上げてみせ、ダーシーは得意げにわずかに身体をそらせた。