ダーシーという男は、アイラやエリーシャが思っていたよりはるかに食えない男だったようだ。あの日、アイラが叩きつけて走り去った扇を、彼は皇宮に仕える侍女たちに渡すことなく持ち去っていた。

「うわあ、最悪」

 エリーシャは顔をしかめた。

「どうなさいました?」

 今は寝る支度を完全に終えたところだ。イリアとファナは、自分たちの部屋に引き下がっている。

 従って今エリーシャの部屋にいるのは、アイラとエリーシャだけだった。

「見てよ、この招待状」

 アイラの目の前に、美しいカードが差し出される。

「レヴァレンド侯爵家での茶会ですってよ。ふざけてるわ」

 エリーシャは顎をしゃくった。その一番下にある文にいらついたようだ。
『先日お預かりした扇も、その時お返しいたしたく』

 ふんと鼻を慣らして、エリーシャはアイラの手から招待状を取り上げた。

「どうなさるんですか――」