アイラはうつむいたまま、肩を震わせた。どうしたらいいかとっさに判断できないけれど、うかつな答えを返せば危険に足を踏み入れてしまうことになりそうだ。

「それは――」

 アイラの頭の中でぱちりとパズルのピースがはまった。

「えぇ――、カーラに頼みましたわ。だって、別荘に行った時に襲われたんですもの……当然でしょう?」

 エリーシャ自身も、アイラも。襲われるなんて思ってもいなかった。ダーシーが目を細める。

「――どのような、術を?」

 手にした扇を口元にあてて、アイラは表情を隠す。

「お教えできるはずないでしょう? わたくしの身を守る術ですのよ?」

 ダーシーは苦笑いになった。

「たしかに、そうですな――愚問でした」

 失礼いたしました、と彼は頭を下げる。

 ほっとして、アイラが口元を隠した扇の陰で息をついた時だった。すいっと彼はアイラの耳元に口を寄せる。