「侍女って、何するんですか?」
「まあ、表向きは――でしょ、イヴェリン?」

 柔らかな口調で、ゴンゾルフが言った。

「そうだな、本命はもう一つ。エリーシャ様の影武者だ」
「はあ?」

 アイラの声が裏返った。

「つとまるはずないでしょう、エリーシャ様は金髪、わたしは黒髪。だいたいちっとも似てませ――」

 ぽん、と上から何かが降ってきた。顔にわさわさとかかる感触に、それが鬘であることを知る。

「――見てみろ」

 イヴェリンがアイラの前に鏡を突き出した。
 あ、と言ったきりアイラはその後が出なかった。

 似ている――今までは気がついていなかったけれど、皇女エリーシャにそっくりだった。うり二つ、というところまではいかないが雰囲気が一気に彼女に似たように思えた。

 もっとも、皇女と間近に接する機会などあるはずがない。式典の際にバルコニーから手を振っているところを遠くから見るか、街中に出回っている肖像画を見るしかないのだけれど。