真面目な顔になったジェンセンは、魔術師の着るローブを見苦しくない形に整えると床の上にあぐらをかいた。

 寝間着の上にガウンを羽織ったエリーシャとアイラも同じようにする。

「さて、皇女殿下――エリーシャ様」

 ジェンセンはエリーシャを見つめた。

「わたしは、皇帝陛下の直属として動いております――そのわたしが、あなたの呼び出しに応じてここまで来た。そのことからも、皇帝陛下はあなたの側に立っていると信じる理由にはなりませんか?」

「あんたが、おじい様の直属ってとこが怪しいじゃないの」

 エリーシャはふんと鼻を鳴らした。その手が、床に横たえた剣を引き寄せる。

「いい加減なことを言うと、叩き切るわよ」
「おお、怖い怖い」

 少しも怖がっていない口調でそう言うと、ジェンセンはエリーシャの前に左手を突き出した。

 その中指には、銀色に光る指輪がはめられている。ジェンセンは敵意などないと示すようにゆっくりと右手でその指輪に触れた。

「風の精霊よ、ジェンセン・ヨークの名において命じる。その口で真実を語れ」