アイラは二人が会話しているのを眺めていた。何しろこの時間だ。お茶の用意というわけにもいくまい。

「うぅん、ちょっと待って……はん、そういうことね」
「さすが皇女様、すぐにおわかりいただけると思いましたよ」

 わかっていないのは、アイラだけだった。

 エリーシャは、アイラの方にちらりと視線を向ける。

「要はダーレーンの血が入っている人と、入っていない人の二つに分類されるってことよ」
「……ダーレーン……」

 ダーレーン王国は、タラゴナ帝国と国境を接する国だ。皇后オクタヴィアにも、リリーアにもダーレーンの血が流れている。

「でも、ダーレーンの血が流れているといっても、それと死者に関する魔術は関係ないでしょう?」

 ジェンセンが真面目な顔になった。

「セシリー教団についての情報を集めるよう、ゴンゾルフに命じたな。皇女殿下?」

 エリーシャはうなずく。

「皇女近衛騎士団が動くわけにはいかないから、ゴンゾルフから皇宮騎士団を通じて、調査を頼んだってわけ。あちらには調査専門の部隊があるし――」