「だいたい、フェラン様こそなんでわたしに関わりたがるんですか?」

 その言葉に、フェランの方が黙り込む。

「わたしに関わると、何かいいことがあるんですか?」
「……」
「そこで首かしげないでくださいよ!」

 さて、ここで首を捻られて傷つけばいいのだろうか、流せばいいのだろうか。

 もっとも、フェランのような人種にとって自分がそれほど魅力のある存在ではないことも十分承知しているつもりではあるが。

 自分と親しくしたがる裏には、絶対何かあるとアイラは踏んでいる。まさか、エリーシャに近づく手段が欲しいとか?

 なにせ、皇帝一家の住居である後宮内の一部には入ることを許されても、その奥の皇女宮までは許されていない。

 アイラを籠絡することができれば、皇女宮に潜り込む手段の一つになるかもしれない。しれないが、かなり不愉快な話だ。利用されて喜ぶほど人間ができているわけじゃない。

「まったく――、用事が済んだんだからさっさと帰りますよ!」

 皇女宮まで戻る間、フェランはずっと首を捻り続けたままだった。