久しぶりにアイラが外出を許されたのは、床を離れて数日後のことだった。父親のこともあり、アイラ自身狙われている可能性もあるため、一人での外出というわけではない。

 アイラの見えないところで、こっそり宮廷魔術師が護衛につき、堂々と付き添うのはフェランだった。

「……何でフェラン様が一緒なんでしょうね」

 町で暮らしていた頃の服を着て、アイラは後宮の裏口――ではなく、裏口と化している隠し通路――からこっそり後宮を出た。

「そりゃ、護衛が必要だからだろ。俺じゃ不満?」
「不満なのではなく、分不相応だと言ってるんですよ」

 今日のフェランは、皇女近衛騎士団の制服ではなく私服を着込んでいた。

「側から見てたらさ、俺たちデート中に見えない?」
「――見えませんよ」

 フェランの服の仕立てはアイラのものとはまるで違う。どう贔屓目に見ても、主人の外出につき合わされるメイドないし侍女と言ったところだ。

「えー、アイラ、つれないなぁ」