胸が貧しいけど、とよけいな感想を付け足してカーラは掌で指輪を転がした。

「この指輪を作るようにってエリーシャ様に言われて、渡した時に合ったよ。強引に術を解かれて壊れたけど。今度は容易に解かれないようにしないとなんだけど――」

 アイラは魔術師じゃないから難しいんだよね、とカーラはため息をつく。

「あの子、おかしいんだけど気づいた?」
 え? とカーラは作業の手を止めてベリンダの方を見た。

「この本」

 ベリンダは手にしていた「死者操術」の本をカーラの方へと突き出す。

「ああ、死者操術? これ入手困難なんだよねぇ」
「――あの子、この書物のタイトルをすらすらと読んだ」

 眼鏡の縁越しに、カーラはベリンダを見上げる。

「……それって」
「おかしいだろ?」

 ベリンダはカーラから本を取り戻した。

「この本は、一般の人間が見れば何が書いてあるのかタイトルすら読めないのはわかるよね? たとえ、魔術書を読める程度に学んだ人間が見たところで――」

 ベリンダは目を細めて、タイトルを解読しようとした。