そうこうしているうちに、三人を乗せた馬車は皇宮の門をくぐっていた。馬車の窓から見える皇宮は、どっしりとした造りの白亜の建物だ。真っ赤な花が建物と地面の境目を飾っている。

「――降りろ」

 ライナスが馬車の扉を開く。アイラは一つ、呼吸をすると足を踏み出した。
 
 建物は無駄に――無駄に、と言っては悪いのだろうが広かった。廊下の床には赤いカーペットが敷かれている。

 壁には一定の間隔で、皇族たちの肖像画がかけられている。

 タラゴナ帝国の始祖女帝ウォリーナの赤いドレスをまとった姿。
 今でも即位の儀式の際には使われる巨大なルビーをはめ込んだ宝冠を頭に載せたその姿はりりしく、美しい。その隣に並ぶのは女帝の夫だった騎士の姿。

 それから何代もの皇帝やその伴侶の前を通り過ぎて、アイラは巨大な扉の前にたどりついた。

「アイラ・リードを連れて参りました――団長」
「どうぞ、入って」

 聞こえてきた男の声に、アイラの身が引きしまる。扉がゆっくり開かれた。