翌日やってきた、新しい侍女――イヴェリンの手配した在野の魔術師――は、他に仕えている侍女たちと違って、中年の女性だった。アイラの父より年は上だろう。
 
「ベリンダ・キース――どうぞよろしく」

 にこにことしながら、アイラを含めた他の侍女たちに挨拶する。ぶっきらぼうなしゃべり方だが、灰色の瞳は人好きのする雰囲気を漂わせている。

「一応侍女頭として入ることになったから、表向きはそのつもりで。それと、エリーシャ様と皇族の方々の夕食会には付き添わないからよろしく――何か聞かれたら、その間にあなたたちの部屋のチェックでもしてることにしておいて。おっかないばばあだって言ってかまわないから」

 アイラはまだベッドを出ることを許されていない。エリーシャの寝室で、顔合わせをすませると、アイラ一人を残して皆エリーシャの寝室を出て行ってしまった。

 寝室の扉を閉めてしまえば、あとはほとんど静かになる。アイラはうとうととしていた。

 ベリンダが戻ってきたのは、エリーシャの作った図書室に行ってしばらくしてからだった。

「アイラ、起きてる?」

 アイラは眠い目をこすりなら開く。