「わたしが顔を見せても顔色一つ変えないのよ。大変だったわねって逆に慰められたわ」

 床に置いたクッションにどすんと座って、エリーシャは腕を組んだ。

「……本当に皇后陛下が関わっているんでしょうか?」

 アイラの問いにも、エリーシャは渋い表情を崩さない。アイラがベッドを離れられないものだから、必然的に皆が集まるのもエリーシャの寝室になった。

「わかんない。とにかく情報を集めて、集めて――よね」 
「それにしても驚いたわ。アイラのお父様が、『あの』ジェンセン・ヨークだったなんて――同姓同名だとばかり思ってた。今は何を?」

 イリアの問いにアイラは首を横に振った。

「わからない。父さんは父さんで何か調べているみたいなんだけど、詳しいことは教えてくれる時間はなかったから」
「アイラをここに入れたのは、人質として利用されるのを防ぐためだったのね」

 感心したように、イリアは言う。

「売り飛ばされたなんて、冗談だったのね!」

 ファナの言葉に、苦笑いしか返せなかった――売り飛ばされたというのとは少し違うだろうが、借金の件はどうなっているのかあとでゴンゾルフ夫妻に確認しなければ。