布団にくるまっているアイラにはかまわず父は勝手に話を続けた。

「とりあえず、エリーシャ様の側を離れないでくれ。そもそもおまえが皇女宮に入ったのは、パパがおまえの保護をゴンゾルフに頼んだからだ。この国で一番安全なのは後宮だからなぁ」

 では、売り飛ばされたわけではなかった? アイラは思わず上半身を跳ね起こした。傷の痛みにうめきながら、父の顔を見つめる。

「じゃあ――借金は?」
「ああ、あれは本当。いやいや、パパ、お金の使い方が下手くそでねぇ」

 なんでもないことのように、ジェンセンは大仰に両腕を広げて見せた。対照的にアイラの肩が落ちる。

「いやー、イヴェリンも考えたねぇ。ただ、保護するって言ったらおまえ反発して逃げるだろ? でなきゃ自分みたいな一般人に保護は必要ないってはねつけるだろ? 借金の返済なら頑張ってお仕事しちゃうもんなぁ。パパ、借用書に娘を好きにしていいって書いといて本当によかったと思うよ」