「いいよぉ」

 腹の立つ口調だが、ジェンセンには確認したいことが山ほどある。とはいえ、それはイヴェリンと再会してからのことだ。

 フェランはアイラを抱き上げると、ジェンセンの後について歩き始めた。

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 ジェンセンが向かったのは、皇帝家の別荘だった。窓のガラスは割られ、扉は蹴倒されてひどい有様だ。

「フェラン――無事だったか」

 少々疲れた様子のイヴェリンは、屋敷の使用人たちに命じて、部屋を片づけさせているところだった。

 フェランの腕に抱かれているアイラを見ると、彼女の顔色が変わる。

「アイラはどうした?」
「怪我を――かなりの重傷です。応急手当はしましたが、医師の手配を」
「わかった。イリア、開いている部屋を用意してくれ。奥の部屋なら使えるだろう」

 無事だった侍女たちが、ばたばたと駆けだしていく。

「エリーシャ様は?」
「ご無事だ。今は奥で休んでおられる」