アイラはベルトに二本の短刀を挟み込んだ。長剣が使えなくなった時に、役に立つかもしれない。

 イリアとファナも緊張した面もちで、エリーシャの部屋に駆け込んでくる。二人とも、姿を変えたアイラとエリーシャを見て、その場に硬直した。

「えっと……」

 アイラの素顔は二人とも知っているものの、どちらが本物なのか、一瞬区別できなかったらしい。

「失礼いたします!」

 ノックもせずにイヴェリンが飛び込んできた。彼女の持つ剣は、血に濡れている。

「アイラ!」
「はいっ!」

 イヴェリンはアイラを扉の方に押しやった。

「ライナスとフェランと一緒に行け! エリーシャ様は、他の侍女たちと一緒にわたしについてきてください」

 ライナスとフェランと一緒に行けということは――アイラを囮に使うということだ。彼らは皇女近衛騎士団の中でも高位に属するから、彼らとともに逃げれば目立つだろう。