「覇気のない感じであったのは、事実ですね」
「あー、やってられない。あれが今後好き勝手に面会をもとめてくるのかと思うといらいらするわ!」
「お断りするわけには?」

 アイラを横目で見て、エリーシャはふんと鼻を鳴らした。
 
「おばあ様に逆らうことなんてできると思う?」

 エリーシャにも怖いものがあるらしい。たしかに皇后は厳格そうな人ではあるが。
「……決めた」

 最後のクッキーを口に放り込んでエリーシャは宣言した。

「明日から温泉保養に行くわ!」

 三人の侍女たちは顔を見合わせた。

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 幸いなことに――重要な公務は予定には入っていなかった。家庭教師と侍女たちを同行させて、エリーシャは都のロウボーンを離れた。

 皇帝や皇后をどうやって言いくるめたのかまでは、アイラの気にするところではない。