「うああああ! やってらんないってーの!」

 面会用に身につけたドレスを脱ぎ捨てながら、エリーシャはわめいた。

「なんなの? あの男、なんなのよ! どう冷静に見たって使えないじゃない!」
「……でも、なかなか美形でしたよ。エリーシャ様」

 アイラは厨房から持ってきたパイをテーブルに並べながら言った。

「ふん、美形だからって役には立たないわよ」

 それは当然なのだから、アイラもそれ以上は何も言わない。
 
 栗のパイだけでは足りなくて、一緒にカボチャのパイとクッキーをもらってきた。香りの高いお茶をイリアが各自のカップに注ぐ。

 いつもの気楽な格好に戻ったエリーシャはソファに腰を落とすと、行儀悪く胡座をかいた。

「あいつにタラゴナ帝国を一緒に背負ってもらう気にはなれないわ」

 夕食までそれほど時間があるわけではないのだが、エリーシャは気にしない。半ばやけの勢いで、テーブルに並んだ菓子を片っ端から口に運んでいく。

「なんというか、父親に生気を全部吸い取られたという感じだったわよね」

 エリーシャはアイラに同意をもとめる。苦笑いでアイラはうなずいた。