「今年採れた栗で作ったパイよ。温かいうちに召し上がれ」

 皇后自ら切り分けたパイを、テーブルについている一同の前に並べていく。
 
 焼きたてのパイのいい香りが漂って、アイラの食欲もそそられる。残念ながら、食べるわけにはいかないが。

 何度か勧められて、レヴァレンド侯爵父子は、フォークとナイフを手にする。
 
 エリーシャは客の前だから、フォークとナイフを繰る手はいつもより緩やかに動いていた。

 後で厨房にパイの残りがないか確認させられるな、とアイラは内心おかしくなった。

「では、そなたには今後エリーシャと自由に面会する許可を与えます。会う時は、皇帝宮の部屋を使いなさい」

 お見合いも何も最初から結論は決められている。皇后がダーシーに限られた場所であるとはいえ、後宮内への出入り自由の許可を与えて「お見合い」は終了した。

 皇女宮に戻るのと同時に、アイラが厨房に走らされたのは、予想通りである。