今日の警護はライナスと、アイラは見たことのない短髪の騎士によって守られていた。

「ライナス様」

 もう一人には話しかけようもなかったから、アイラは知っている方の顔に声をかけた。

「エリーシャ様のご命令です――明日の朝、一番にゴンゾルフ様とイヴェリン様にお会いしたいと」
「何があった?」

 ライナスの瞳が鋭さを増す。

「さあ――わたしは手配するように言われただけなので」

 踵を返して戻ろうとするアイラの手を、ライナスは掴んだ。

「今日、外に出たな?」
「ええ――、まあ」

 確かに外には出た。侍女のお仕着せに着替えてきたはずなのに、なぜばれたのだろう。

「そこで何か変わったことはなかったか?」
「特にはないですよ――」

 密偵、というくらいだからパリィの存在は誰にも教えない方がいいのだろう。