「すず!早く早く!須賀の予選がはじまるよ」

席に戻るとちょうどアナウンスで「男子100メートル自由形予選2組」と放送されていた。

私が腰を下ろすと同時にプールサイドに選手たちが入場してくる。須賀は第4コース。


「なんかドキドキする~」

「でも予選だし須賀は余裕だよ。ってかみんな体やば」

クラスメイトたちがざわつきはじめる。


やっぱり県大会を勝ち抜いて関東大会に出場している選手の体つきはすごい。

学校だと須賀だけが特別に感じるけど、選ばれた人たちにとっては普通のこと。


「須賀ー!頑張れー!!」

他の応援に負けないぐらい先生も含めて声を出していた。

選手たちがスタート台に立って腰をかがめる。
そしてスターターピストルが青空に向けられた。

この瞬間だけは会場がシーンとなって、次にパンッ!と弾ける音とともに選手たちが水の中へ消えた。


わー!!と盛り上がる観客席。

「須賀ー!須賀ー!」と耳元で響くクラスメイトの声。

私は声も出さずただじっとプールを見つめていた。

50メートルを泳いで折り返しのターン。その時点で須賀は4位。だけど後半はあっという間に追い抜いて、須賀は余裕で1位になった。


「すごいね!途中ダメかと思っちゃった」

紗香がふーとため息をついた。


すごい?当然だよ。

他の選手は息を切らせているのに、プールから上がった須賀は息ひとつ上がっていない。

あんなのはただ流して泳いでいただけ。


もちろん圭吾くんも違う組で予選1位通過。

そのあとお昼休憩を挟んで、午後から決勝がはじまる。