…あ、じっと見ていると巡先輩と目が合ってしまった。
その直後、私の前に紘汰君が立ちふさがり、私の手を握りしめた。

「…姫香、行こう?」

 さりげなく呼び捨てにされて、そのまま紘汰君に引かれて歩く。
(あ。かばってくれた…?)

「あ、ありがとう…」

 小さくお礼を言うと、紘汰君は微笑んだ。

「ううん、どういたしまして。」

(本当に、優しいな…こんな人が彼氏だったらいいのに。)
幸せな時間はあっという間に過ぎて、気が付けば教室。

「おはよう姫香~!」
 仲良しの津田 悠里(ツダ ユウリ)が私に笑顔であいさつした。
キリッとした目元に茶髪のパーマ。気の強さが顔だけでわかる。

「おはよう紘汰~!!」
 紘汰君にあいさつしたのは、悠里の弟の太陽君。
ぐりぐりと紘汰君の頭を撫でていて、仲が良い。