王の間は静まり返り、道化師も何が起こったのか分からない様子です。
家来が叫びます。
「みんな、いつもの事だ!もう、終わった。持ち場へ戻れ」


見にきてた城の者達は、ぞろぞろと帰っていきました。

道化師は一人、立ちすくみ生気がぬけています。

家来は、
「女王を侮辱する言葉は許されない、そういう国だ。お前も知ってて歌ったんだろ?有名だからな。しかし、考えが甘すぎる。とにかく、できる限りはする。牢に大人しく入ってくれ」
と、言い道化師を地下の牢へ連れていきました。


地下は、薄暗く蝋燭の明かりだけが頼りです。
気持ちの悪くなる臭いがして、吐きそうになります。
明らかに、衛生面に問題があり一週間でもいたら確実に病気に罹りそうな雰囲気です。

その中でも、1番綺麗な牢へ道化師を入れました。

「何とか頑張ってみるよ。だから、お前も我慢しろ」
家来は道化師を励ましました。

道化師は、
「…よろしくお願いします」
と、か細い声で答えました。

家来は、すぐに上へ戻っていってしまいました。

道化師は、一人思いました。
「つい、さっきまで上にいたんだ。たった、一言だぞ。有名通り、最高にわがままだ。どうか、助かりますように…」

道化師は部屋でずっと祈り続けました。
それ以外に、する事はなかったからです。
しかし、自分の格好を見て思いました。
「こんな格好で、牢だなんて。まったく、見事な滑稽さだ」

道化師らしい、考えも浮かびました。