プリンセスの憂鬱【BL】(※仮)

 
「朧からお前を奪っておけば良かった、って……」


 シャツの裾から入ってきた手が、肌を撫で上げていく。


「……っ」


 慣れた筈のその手の感触が、なぜか酷く気持ち悪かった。


「朔杜……っ!」


 手が動き回る度に背筋が粟立つ。


「俺と、やり直そう。俺がお前を守ってやるから」


 吐き気さえ憶えて……。

 思わず閉じてしまっていた目を、そっと開けた時──


「──恭介」

「……ッ!?」


 どくん、と一際大きく鼓動が跳ね上がった。

 薄暗い車内。

 俺に覆い被さる大きな影が……。


「……っ、や、ぃや、だ……っ」


 ──アイツの姿に、重なって見えた。


「ぃ、やだ!! やめてっ!!」


 ここにいるのは、朔杜なんだ。

 アイツじゃない!

 朔杜だ!

 朔杜なんだよ!!