「また黒崎か」
低くなった朔杜の声色に反応するように、俺の苛立ちも募る。
「俺が恭介と付き合ってるのが、そんなに気に入らねぇのかよ」
「──ああ。あんなヤツに取られるなんて思わなかったからな」
朔杜の瞳に、怪しい色が混じる。
「ヒメノ」
それに薄ら寒さを感じた俺が慌ててシートベルトを外すと、阻止するように伸びて来た手が俺を捕まえた。
「放せ……っ」
いつの間にシートベルトを外していたのか、俺に覆い被さって来た朔杜に唇を奪われる。
「朔……ッ」
強引にされるのは嫌いじゃないけど……。
こんな風に力尽くでとなると話は別だ。
「朔杜、やめろって!」
身長も体格も、朔杜の方がデカい。
俺が両腕で押したところで、びくともしない。
それでも押し退けようと突っ張っていると急に、ガクン、とシートが下がって、瞬間的に朔杜の身体に押し潰される様な感じになった。
思わぬ衝撃に動けないでいると、朔杜の脚が俺の膝をホールドして本格的に身動きが取れない状態になってしまっている。


