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カシャン、という音で目が覚めた。
恭介が帰って来たみたいだ。
いつの間にか眠ってしまっていたみたいだけど、異様な程身体が重い。
起き上がれずに布団に包まったままでいると、程なくして部屋の戸が開いて暗かった部屋に明かりがつけられた。
「ヒメ! どうしたんだよ、大丈夫か?」
心配そうに俺の顔を覗き込む恭介を見ていたら、目頭が熱くなってきて、涙が零れてしまった。
「……っ!? ほんと、どうしたんだよ。何かあった?」
「恭介……」
俺の頬に触れている手を取って、衝動のままにその指を食んだ。
恭介の手は、いつもイイ匂いがする。
「ヒメっ!?」
「恭介……、セックスしよう」
「……え?」
「今は、恭介の事だけ考えたい。お願い……ダメ?」
「……ッ、そんな風に誘われて、断れる訳ないだろ……」
今の恭介は、俺からの誘いを絶対に断らない。
それが分かっていても、ダメ? と上目遣いで聞くのは、もうそう言う事がクセになってしまっているからだ。


