その日まで

もういいじゃん。志望校決まってるんだしさ。
いや、資料って。何回も見てますから。ええ、理事長の顔と名前なら覚えちゃったくらいに。

「頑張れよ!」

「はい」

激励の言葉を最後に、三者面談は終わった。
あー長かった。
くわっと大きいあくびをして母さんと廊下を歩く。
太陽が遠くの方で頭だけをだして、こっちの空はもう暗くなっていた。

「母さん。今日のご飯なに?」

「唐揚げよ」

「やった」

大好きなからあげが待っているんだ。早く帰らなければ。
静まりかえった校舎から外に出ると、突き刺さるような寒さが体を震わせた。

「さっむー!」

手袋をかぶった両手を耳にあてる。

「寒いわねぇ」

とか言いつつ母さんがほっこりとした顔をしてるのは、着ている分厚いクリーム色のコートとその内に貼ってあるだろうカイロのおかげだろう。

「自転車とってくるわ」

「うん。校門で待ってるから」

母さんの背中を見送って、早歩きで校門に向かう。
少しは暖かくなるかなって思ったけど早歩きって普段やらないから疲れるだけだった。
校門に着いてすぐに母さんはやってきた。
自転車をおして隣を歩く母さんがポツリと言った。

「舞も、もう卒業かー」

「うん」

あと3ヵ月とちょっとが過ぎれば、の話である。

「がんばってね、舞」

さっき担任から言われたハツラツとした言い方じゃなく、ほんわかとした感じなのは母さんの性格がにじんでいた。

「うん」

せいぜいご期待にそえれるよう、がんばりますよっと。