裏面ワールドトリップ

「クリステラクト国王〈モーリッツ4世〉が、周辺の国を次々に侵略し、このバルダクタル王国も制圧しようとしているのよ。

〈言葉小人〉の力で」


「言葉小人?」


「ええ」



ローゼさんはキッチンに向けて杖を一振りした。


調理台の上のカップに、ティーポットがひとりでにお茶を注ぐ。



「こちらの世界で広く信じられている、古い言い伝えなんだけど。

『言葉は目に見えない小人である。受け取った者の体内に宿り、心を温めたり美しく磨いたり、逆に惑わしたり食い荒らしたりもする』

ってね」



ティーカップがローゼさんの前まで静かに飛んで来た。


その後ろを付いて来たポットが、私のカップにもお茶を注ぎ足してくれる。


ビスケット、クリームチーズ、ジャムが入った皿が、私の前に置かれる。



「モーリッツは、自らが生み出す強い〈言葉小人〉の力を悪用して、こちらの世界を侵略しているの」